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豪州、代表不人気と国内リーグの”格差拡大”。問い直されるサラリーキャップの意義

text by 植松久隆 photo by Getty Images

”英雄”は何処へ向かうのか。故郷への帰還はまだ先…?

ティム・ケーヒル
ティム・ケーヒルの母国凱旋はなるのか【写真:Getty Images】

 実際、ブリスベン・ロアが元代表の主力MFブレット・ホルマンをこの枠での獲得を試みたが、FFAから助成を認めてもらえずに断念する事例が起きている。既に代表を引退してかなり経っているホルマン(とはいえ、まだ32歳)は、FFAの基準を満たさないとの判断だったが、この対応も「ほら見たことか。ケーヒルありき、メルボルン・シティありきの制度なんだ」というファンの思いを助長してしまった感がある。
 
 個人的には、今回の「フルタイム・ゲストプレイヤー制度」は形骸化しつつあるマーキー制度の意義、燻り続けるサラリーキャップ制の是非を問う議論に新たな論点を加えることになると思う。

 今回のような場当たり的な改定を加えていくのではなく、AリーグとFFAはそろそろサラリーキャップ制というリーグの有り様の根幹にかかわる事例に関しても”聖域”を作らずにレビューしていく時期に来ているのかもしれない。

 翻ってケーヒル。一時期は舌戦を戦わせたギャロップCEOがその発言を詫びることによって、FFAとケーヒルの間の軋轢はなくなったとされている。しかも、今回はAリーグが上記のような制度を設けて英雄の母国凱旋への環境整備を整えた。しかし、それでも肝心のケーヒルの動きは重い。メルボルン・シティと交渉があるのは間違いないのだが、いまだに中国への未練も隠さない。

 今年で36歳を迎える英雄は既にこれまでのキャリアの中で、どうも本人はまだ故郷に錦を飾りたいとは積極的に思っていないように見える…。そんな疑念が豪州のファンに芽生えてしまうのは残念なことだ。いずれにしても、決着の日は間近。ケーヒルの動向から、しばらくは目が離せない。

(文:植松久隆)

【了】

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