次は「また7年後くらいに」
キャプテンとしてチームを統率する力――サッカーやラグビーでよく使われる「キャプテンシー」という言葉の意味を調べると、こう綴られている。
統率力を表現する方法は、もちろん十人十色だ。4人の日本代表監督のもとでキャプテンを務めてきたMF長谷部誠(フランクフルト)は、真面目で誠実な人柄でいまもチームをけん引している。
後半アディショナルタイムの失点でワールドカップ出場を逃した「ドーハの悲劇」で日本代表を率いたDF柱谷哲二(ガイナーレ鳥取監督)は、仲間を激しく叱咤する言動から「闘将」と呼ばれた。
Jクラブに目を移せば、中村(マリノス)や遠藤保仁(ガンバ)の両ゲームメーカーは、卓越したテクニックと独特の存在感でチームに安心感を与えてきた。
ざっと名前をあげた選手と明らかに一線を画す阿部は、どんな状況でも臆さない、頼れる背中でチームをけん引するキャプテンシーを発揮しているといっていい。
34歳にしてフルタイム出場を続けられる頑丈でけが知らずの体。カードとも無縁になったクリーンで、それでいてハードでアグレッシブなプレースタイル。あまりに大きすぎる阿部の存在を、槙野はこんな言葉で表現したことがある。
「賢さも必要なポジション。一番大変だと思う」
サッカーの神が存在するとすれば、レッズのために身を粉にして闘い続ける阿部に魅せられ、2016年7月9日の夜にその右足の舞い降り、芸術的な直接FKを導いたのだろう。
試合後の取材エリア。旧知の関係者から「コーナーも蹴ればいいのに」と言葉をかけられた阿部は、再びはにかみながら「大丈夫です」と答えている。
短い言葉に込められた意味は何なのか。頼れるキッカーがレッズには大勢いる。自分は縁の下で彼らを支え続ける存在であればいい。チームの勝利に心血のすべてを注ぐからこそ、直接FKからのゴールを10点の大台に乗せる「Xデー」にも無関心を貫き、周囲を笑いの渦に巻き込んだ。
「また7年後くらいに」
優勝と年間総合勝ち点の1位を目指すセカンドステージで、レッズはフロンターレ、ガンバ、マリノスとともに連勝スタートを切った。本人は意識していないはずだが、残り15試合にすべて先発フル出場を果たしたとき、阿部が継続中の連続フルタイム出場記録は「127」に伸びて歴代2位に浮上する。
(取材・文:藤江直人)
【了】