代えづらいポジション。GKの特殊性
念願のリーグ戦デビューは、上々どころではなく抜群だったといえるだろう。何度も訪れた絶望的なピンチで、志村は相手の前にことごとく立ちはだかった。FC東京戦から5試合連続でリーグ戦を経験した。2ndステージ第1節・サンフレッチェ広島戦は3失点を浴びたが、志村の好守がなければネットを揺らされる回数はさらに増えていた。続く大宮アルディージャ戦では終盤に追いつかれ、勝ち点2を落とす結果となったが、失点シーンは彼にとってノーチャンスといえた。
他のポジション以上に、GKは定位置確保が難しい。言うまでもなく、ピッチに立てるのは一人だけ。よほどのことがなければ代えづらいポジションだ。3番手、4番手に出番が回ってくることはほとんどない。例えば、第1GKが負傷すれば頼れる控え選手がその穴を埋める。磐田に置き換えれば、カミンスキーが欠場したとしても八田がピッチに立つ、というように。
だがサックスブルーは主力、第2GKを立て続けに欠くこととなった。チームにとっては損失でしかないが、その次に控える者からしたらどうか。
千載一遇のチャンス――。
志村は奮い立った。次にいつ訪れるかわからないような絶好機を、その手で掴んでみせたのだ。彼は幸運なのかもしれない。しかし、漫然と日々を過ごしているだけではピッチに立てるはずがない。ナビスコカップで確かなプレーを見せなければ、指揮官もリーグ戦での起用を躊躇していたかもしれない。その意味でも、カップ戦で安定したパフォーマンスを見せたことは大きかった。