「ロナウド後」にとっても財産となる成功体験
地元のフランスが歓喜に沸き立てば、エンディングとしては最高だったかもしれない、しかし、ベストな終幕を自ら捨てたのは他ならぬ彼ら自身だ。勝ったポルトガルには、ただでは転ばない粘り強さがあり、逆境を跳ね返すだけのメンタリティもあった。途中投入の選手が決勝ゴールを挙げたのは、チーム全体で戦った賜物だ。ポルトガルはようやく勝者となり、歴史にその名を刻むこととなった。
そして、『国際トーナメントで勝ったことがある』という成功体験が血となり肉となり、大舞台での勝負強さに繋がっていく。これまでも、ポルトガルは好選手を輩出し続けてきた。フェルナンド・コウトや黄金世代のマヌエル・ルイ・コスタ、ルイス・フィーゴ。現役ではロナウドはもちろん、クアレスマ、ジョアン・モウチーニョ。さらに今大会で彗星のごとく現れたレナト・サンチェスは、1997年生まれの18歳だ。彼は今季からバイエルン・ミュンヘンでプレーすることになっている。今はまだ、期待の新星の中の一人かもしれないが、『ロナウド後』のポルトガルを引っ張っていくべき人材だろう。
国際大会に出場するたびに優勝候補の一角に挙げられてきたのも、能力の高い選手が多数いたからだ。だが、好チームではあったが決して勝者ではなかった。それが今までのポルトガルだった。今回の欧州制覇でそうした残念な歴史に別れを告げられるか。果たして、彼らはどのような変化を遂げていくだろうか。
(文:青木務)
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