C・ロナウド負傷も動じなかったポルトガル
フランスのファンでもなく、ポルトガルのファンでもない中立な目で試合を観る者からすれば、前半10分足らずで試合は“一度終わった”といえるだろう。
アントワーヌ・グリーズマンとクリスティアーノ・ロナウド。EURO2016ファイナルを彩るはずのクラッキのうち、ポルトガルの大エースが開始早々に負傷。テーピングを何重にも巻き、ピッチに戻る。代表レベルでのタイトルを何としてでも獲得したいという熱意は感動的ですらあったが、全力疾走もままならず、競り合いでジャンプするたびに顔が歪む。ヨーロッパチャンピオンを決めるハイレベルな一戦に、手負いのアタッカーの居場所はなく、最後は自ら交代のサインをベンチに送った。
1975年以来、ポルトガルはフランスに41年間勝てておらず、10連敗中だった。背番号7の怪我で負の歴史は繰り返されることになるのか。だが、エースの交代に浮き足立つことなく、ポルトガルは統率の取れた戦いを見せることになる。
ロナウドが退いたことでポルトガルの面々は団結力を強めたのか、一人ひとりが「あと一歩」の粘りを見せ、ポジショニングも瞬時に修正しながらスペースを埋める。
レ・ブルーは攻めあぐね、シソコがダイナミックな突破から活路を見出そうとするも、ポルトガルのGKルイ・パトリシオが立ちはだかる。頼みのグリーズマンも惜しいヘディングシュートを放ったが、チャンスを活かせない。ここまで6得点を奪い、チームを牽引してきた決定力が鳴りを潜めた。決勝戦のプレッシャーが少なからず感覚を狂わせていたのかもしれない。後半アディショナルタイムには、途中出場のジニャックのシュートがポストに嫌われた。