W杯の涙から2年。グリーズマンがフランスをけん引
2014年7月4日、聖地マラカナンのピッチでアントワーヌ・グリーズマンは大粒の涙を流していた。大会を通じて5試合に出場しながらノーゴール。フランス代表はドイツ代表に敗れ、準々決勝で姿を消すこととなった。
あれから2年。2016年7月7日、マルセイユの地であの時と同じドイツ相手に2ゴールを決め、グリーズマンは自らが大きく成長したことを証明して見せた。試合後はもちろん笑顔。チームメイトたちと16年ぶりのEURO決勝進出を祝った。
今大会のグリーズマンは止められる者がいないほど圧倒的だ。攻撃では常に相手の空けたスペースを狙いながらフィニッシュ役を務め、カウンターの場面ではボールを前線に運ぶスイッチとなる。守備でも自陣まで引いて体を張ることを怠らず、積極的に中盤の選手達をサポートする。
1トップのオリビエ・ジルーを支える「9.5番」の位置に入っていながら、まさに攻守に代えの利かないピースとしてチームの中心を担っている。歴代のフランス代表アタッカーに見られた必要以上のエゴがないのも特筆すべき点だろう。
もちろん本来の役割であるフィニッシャーとして挙げた6得点も申し分ない。かつて今回と同じ自国開催だったEURO1984で9得点を挙げ、フランスを初優勝に導いたミシェル・プラティニに匹敵する活躍ぶりだ。
グリーズマン本人は「ゴールを決められていることは嬉しいけれど、プラティニには遠く及ばない」と謙遜するが、フランスサッカー界の伝説に一歩ずつ近づいているのは間違いない。当時と違うのは決勝進出が1人の活躍だけで実現できたわけではないということだ。