ポゼッション時に共通する中盤の役割
ポゼッション側の戦術はほぼ共通していて、攻め込んだときのフォーメーションは3-6-1。キックオフ時の形は4-3-3と4-2-3-1に分かれるが、ポゼッション時の形はほぼ同じといっていい。もう少し細かく分ければ2-1-6-1になる。
つまり、2人のCBと1人のMFの計3人が後方待機、最前線は1トップ、その間に6人が投入される。中盤の6人は守備ブロックの隙間へつなぎながらキープし、機を見て相手DFとMFの間に縦パスを打ち込んで崩しにかかる。行き詰まったときはフリーになっている後方待機の3人に戻してやり直す。
中盤6人のうち2人はサイドに張る。従来のSBがこの役割を果たすが、ほとんど敵陣で攻撃しているのでもはやDFではなくMFだ。資質的にもMFと同じものが求められる。このポジションのクオリティにはチームによって差があり、それがポゼッションの質にも関わっている。スペインのジョルディ・アルバとファン・フランがその点ではベスト。
ドイツは少し弱く、3戦目に本来はMFであるキミッヒを起用した。イングランド(ローズとウォーカー)、フランス(サニャとエブラ)は従来型のSBに近いが、いずれも高いポジションをとっている。ベルギーのポゼッションが不調なのはこのポジションに人材がいないことが1つの原因だ。
左のフェルトンゲンはCBとSBを兼務できる人材だがMF向きではない。その点、ポルトガルのラファエル・ゲレイロとヴィエリーニャはスペインに近くポゼッション向きだったが、SBとしての守備には難がある。
もはやDFではない新種のSB(フランカー?)は、従来と同じクロスボール供給のほかに、ボールの落ち着けどころという重要な役割を担っている。タッチラインを背にしているのでプレーの方向は限定されるが、他のMFよりもプレッシャーは少なくフリーになりやすい。状況によっては中へ入ってプレーできる柔軟性も求められる。
フリーマンとしてボールの預けどころになるのはSBだけではない。(続きは『フットボール批評issue12』をご覧ください)