勝負が別れた「3分の悪夢」
我ながら…あざとい。ウェールズ・シンパとしては負けは悔しい。が、試合後のベイルの「悔いはまったくない」が真実味を帯びるほど、負けるべくして負けたのではないと言い切っても恥ずべきところはない。勝負のアヤ、分かれ目はほぼ一点に集約できる――「3分」もしくは「3分の悪夢」。
ロナウドの先制ゴールはヘディングから生まれた。つい思い出すのは、2008年5月21日、モスクワはルジニキ・スタジアム。ユナイテッドのロナウドが決めた先制ゴールもヘディングからだった。ほとんど瓜二つのシーン。此度は、いち早く伸びあがったロナウドが、一瞬ジャンプの遅れたジェイムズ・チェスターにのしかかるように競り勝った。マークが疎かになっていたと言えばそれまで。これもロナウドの十八番の一つなのだ。
だが、次の瞬間、先日のベルギー戦が蘇る。ナインゴランの先制ゴールに火がついたドラゴンズは、慌てず騒がず、じわじわと中盤広くひるむことなく対等に渡り合い、最後には華々しい快勝に結びつけた。ベルギーほどの展開力に乏しいポルトガルなら再現は十二分にあり得る。しかし、そこに思いもしない落とし穴がやってきたとは!
その顛末はすでにご存じのとおり。リスタート後、あっという間に敵陣に迫ったあげく、ロナウドの何でもないグラウンダーシュートが、いずこからともなく体を投げ出して滑り込んできたナニを介してコースが変わり、ヘネシーの逆をついてゴールネットへ。
あえて不運とは言わない。おそらく監督フェルナンド・サントスとキャプテン・ロナウドは、特に「ベルギー戦」にヒントを得てウェールズ対策を練っていたのではないか。ドラゴンズはすぐに切り替えておそらく楽々と自分たちのペースで押してくる。ならば、先制点を奪ったら間髪入れず二の矢で攻め立て、“一息入れさせてはならない”と。
つまり、あのわずかな時間――結果的には「3分間」に、クリスティアーノ以下のポルトガルはすべてを賭けたのだとも考えられるのだ。そして、まんまと成功した。それも、ウェールズ・ディフェンスが緩んだ末に被った失点とは必ずしも考えにくい形で。