カンテ投入の副産物として生まれた2点目
1-0とリードした状況でカンテを出場させたディディエ・デシャン監督は、どちらかといえば守備を優先し、レスターでカンテが見せているような“掃除人”としての役割を期待していたように思える。だがその副産物として、ポグバとマチュイディは前への圧力を強めることができ、それによってこの2点目は生まれた。
フランスはそれまで高い位置でのプレスを積極的にかけておらず、この場面がこの試合で一発目といっても良いくらいだった。ドイツのDF陣からすれば、突然のプレッシングに面食らった部分があったかもしれない。
試合はこのまま2-0で終了。終了間際にはたびたびドイツに決定的なシュートを放たれるも、ロリスのスーパーセーブもありフランスが無失点でしのぎ切った。
今回のフランスには、近年にないほどの一体感が見受けられる。ジネディーヌ・ジダンを中心に結束し、決勝に進出した2006年のドイツW杯以降、フランスはメジャートーナメントで苦汁をなめ続けてきた。
2008年のEUROではグループステージ敗退。その戦犯とされた不満分子、ナスリ、ベンゼマを追い出した2010年の南アフリカW杯では、練習ボイコットなど、信じられないかたちで空中分解。2012年はナスリ、ベンゼマを復帰させ、同じく「87年世代」のジェレミー・メネズ、ハテム・ベン・アルファらを召集したが、そんな個性派軍団をブラン監督はコントロールしきれず。そしてデシャン監督が就任。ドイツに敗れたものの、2014年W杯では良いチームができあがりつつあった。だがカリム・ベンゼマとマチュー・ヴァルビュエナの“セックステープ”事件が起こる。絶対的エースは自国開催のEUROを欠場することになった。
レアル・マドリーのセンターフォワードを欠く状況ではあるが、今大会のフランスを見ていると、代表を取り巻くメディアも含めて、むしろ彼の不在は功を奏しているようにも思える。ヴァルビュエナは不憫でしかないが。
ドイツを破った試合後、フランスはサポーターとともにアイスランドを真似てバイキング・サンダー・クラップをして見せた。アイスランドには遠く及ばないスムーズさであったけれども、パフォーマンス後に皆で喜びを分かち合うその姿を見て、フランスがまとまりあるチームとして仕上がったのだと感じさせられた。
(文:中山佑輔)
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