追うに強いポルトガル、劣勢で粘るウェールズ。勝利の女神が微笑むのは?
というのも、ポルトガル側がベイルを二人、三人がかりでボディーブロー的潰しにかかってくるのは目に見えているからだ。なにしろ、かつて国際デビュー間もない頃のルーニーを負傷退場に追いやった前科がある。ベイルがどんなに荒っぽいチェック、チャージにさらされても、周囲がぐっと堪えて受け流せるかどうかに、おそらく勝負の運の分かれ目がかかっている。
予期せぬせめぎ合いの“心配”はこの辺にしておいて、真っ当な戦力比較分析を簡単にしておこう。冒頭にも示唆した通り、ウェールズはチーム一丸となった連携とバランスのいい集散で、方やポルトガルは個人技の点と点がいかに結びつくかで流れを呼び込む。
したがって、ウェールズにしてみればボール支配率にかかわらず主導権を握っていても、片時も油断はできない。ポルトガルは、そこをこじ開けてみせる変化とスピードにこれまで以上に磨きをかけてくるだろう。ただし、先制ゴールがいずれに生まれるかで、様相がまたがらりと変わる可能性も十分にある。
改めて、これは実に興味深い対決なのだ。ここまでの戦いぶりからして、ポルトガルは追う立場に立った方が強い。ウェールズも、唯一の敗戦・対イングランドの逆転負けとベルギー戦で証明した劣勢からの粘りと“伏兵スコアラー”の活躍を振り返るにつけ、先行してよもや緩んでしまうよりも、反発力にこそチームパワー全開の便(よすが)を見出せる。すなわち、結論は――冷静さを保ち続けられた側に勝利の女神は微笑む。
そのうえで最後に、よりジャーナリスティックな(?)個人的見解を付け加えさせていただく。ディフェンス力の差でウェールズ有利。場合によっては圧勝もあり得る。ポルトガルが勝つとすれば――ここで繰り返す。クリスティアーノ・ロナウドの胸一つ! ベイルに対抗してひとしきり“影武者”に徹し、ここぞというときのひらめきで敵の鼻を明かす! 後生だから、PK戦突入は無しにして欲しい。興覚めもいいところだから。
(文:東本貢司)
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