攻撃面で痛手だったピルロの不在
コンテ・イタリアの弱点は攻め手の少なさにあった。また、5-3-2か4-4-2かを問わず、堅守速攻スタイルにある程度共通する弱点ともいえる。守備にリソースをかけすぎているのだ。
引いた状態からのカウンターは攻め手が限られる。今大会はペッレという強力なターゲットマンを生かすためにクサビの長いパスをパターン化し、その研ぎ澄まされた形から効果的な攻撃を生み出した。しかし一方で、パターン化して有効であるがゆえに他の攻め手がほとんどなく、ドイツのように対応されてしまうと打つ手がない。
後方でのポゼッションはできるので、それを中盤へ移行させて押し込んでしまえば攻撃のバリエーションは増えそうに思えるが、そもそも守備用の人材を揃えてしまっているのでそれが得意ではない。さらに5-3-2の「3」は4人と比べると両脇が空いてしまう。そこを3人の運動量によるスライドでカバーしていてから走行距離が尋常ではない。これでクリエイティブなプレーまで求めるのは酷というものだろう。
コンテ監督がユベントス時代に重用していたピルロがいないのは痛手だった。とくにドイツがアンカーへのマッチアップを曖昧にしていただけに、そこにピルロがいれば(せめてデ・ロッシが、あるいはチアゴ・モッタやヴェッラッティが使えていれば)イタリアの攻撃はもっと変化をつけられたかもしれない。
超人GKブッフォン、ユベントスの鉄壁CB、常軌を逸した運動量をこなしたMF、強力なターゲットマンとセカンドトップを擁するイタリアだったが、伝統芸の1-0を完遂することはできなかった。
(文:西部謙司)
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