「功労者だからこそ」。ガンバが送り出した理由
昨年、広州恒大との準決勝で先発する二川を万博記念競技場で目にしていた竹本氏はかつてガンバ大阪で指導者として二川と接した間柄。大阪まで直々に、背番号10を口説きに来たという竹本氏の存在も「大きかった」、と二川は言う。
「生え抜きのレジェンド」という肩書きよりも、あえて他クラブで一からの競争に身を投じる決意をした天才パサーだが、忘れてはいけない事がある。その実績と功績を認めるが故に、クラブはその挑戦を受け入れたということだ。
二川が400人へのファンサービスを行っている間、トップチームの練習を見守っていた上野山取締役アカデミー部長は複雑な胸の内をこう明かした。
「背番号10をつけた選手にどうしてこういう扱いをするんだ、とサポーターの方に言われるのは分かっているんですよ。ただ、本人が試合に出る事にこだわっているし、そこは本人の意思を尊重した。本当は契約上クラブの管理下にあるんだから、ノーと言えるんだけどね」
エースナンバーを背負い続けて来た小柄なファンタジスタは、新天地での一からの競争にこだわった。そして二川を育てたガンバ大阪は「功労者」だからこそ、その決断を尊重した。
他クラブのユニフォームを着る二川などサポーターなら誰もが見たくないのは事実だろう。明確な正解がない生え抜きのレジェンドとクラブの関係性――。ただ、長年パスサッカーを支えあってきた遠藤が送ったエールが一番の正解に近いのかもしれない。
「このチームで一番長く在籍している選手がいなくなるのは大きなことだけど、活躍しているところを見たいし、活躍しているところが見られなくなる方が寂しいんでね。ヴェルディに行ってまた活躍するところを見せて欲しい」
(取材・文:下薗昌記)
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