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EURO2016 8年前

無策の指揮官が招いたEURO惨敗。イングランド代表は国家同様にさまよい、再生は茨の道【東本貢司の眼識】

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

明日の見えないイングランドは再び茨の道へ

 ひとしきりフットボール界を震撼させ、故国の識者メディアがこぞって「史上最悪の屈監督による史上最悪の屈辱」と嘆いたイングランドの対アイスランド“惨敗”について、ドイツの辛口で有名なメディアは「幻滅したチームの救いがたさを刻みつけた遺言」と評した。

 また、スペインの某紙は「イングランドの失敗は戦術アプローチのせいでもチームセレクションのせいでもない。単に過去の失敗を引きずっているというだけのことだ」と切り捨て、別のドイツ紙は「ホジソンの試合後の辞任発表。それがこの日唯一の彼の評価できる決断だった」…。

 巨匠ジョン・ル・カレは名作「寒い国から帰ってきたスパイ」で、冴えない中年の英国秘密情報部ベルリン支局責任者が、冷戦下の苛烈な現実に翻弄される様子を描いた。さしずめ、ホジソンは「氷の国からやってきた大男たち」の脅威に心千々に乱れ、現実を直視できず打開の道を見出せないまま、寂しく舞台を降りるしかなかったと言うべきだろうか。

 EUの繭をかなぐり捨て見えない明日を手探りでさまよう国家の姿さながらに、我らがスリーライオンズは、新たな再生の“茨の道”に今また踏み出そうとしている。

(文:東本貢司)

【了】

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