イタリアが辿り着いたひとつの“答え”
もちろん、抵抗しても逆転ゴールは奪えなかったという事実は残る。ドイツの最終ラインも最後まで硬かったし、エデルやペッレ、ジャッケリーニらは相手を抜いてシュートに行けなかった。
インシーニエの投入はもう少し早くても良かったが、戦術上のタスクをこなしていた他の選手を凌駕できてスタメンにいない時点で痛し痒しでもある。右サイドで果敢に仕掛けたフロレンツィも延長前にガス欠、代わりに入ったマッテオ・ダルミアンは攻撃面で技術を発揮できなかった。
大会前から指摘されていたクオリティ不足というウイークポイントが、肝心なところで出てしまった。厳しい言い方になるが、PK戦でのシモーネ・ザザやペッレのミスは、その象徴とも言えるものになってしまった。
とはいえ、クオリティも国際試合の経験値も不足する今回のチームが、練習で連携を整えて戦術的に戦うことで、ここまで勝負ができた。
「チームとして組織的なプレーがしっかりできれば、何事も不可能ではないということは証明できた」と主将のジャンルイジ・ブッフォンは語った。2006年ドイツW杯優勝以降は紆余曲折を繰り返し、新たなスタイルの確立に悩んでいたイタリア代表は、アントニオ・コンテ監督のもとで一つの回答にたどり着いたと言える。
ただそれは、次世代に継承して開花させることで初めて意味のあるものとなる。後任のジャンピエロ・ベントゥーラ監督はコンテと同様の戦術コンセプトを持つ監督だが、戦術の継承と新たな人材発掘という課題の両方をクリアすることができるだろうか。
(文:神尾光臣)
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