不透明なデ・ロッシの現状。コンテの悩みの種に
優れた読みで相手の攻撃の芽を摘み、的確にパスコースを切って動きを制限。中盤の動きの支柱となって素早くスペースを埋め、自らも正確なパスで攻守を素早く切り替える。ここまでの試合でユーベ組の3バックとジャンルイジ・ブッフォンが安定した守備を披露できたのは、彼らの連携のほかにデ・ロッシの存在によるところも大きかった。
だが今シーズン故障時だった彼は、本大会ギリギリ間に合ったという格好で、90分をやり通せるくらいにコンディションはしていない。それに加え前節のスペイン戦では左太ももに故障を訴えてベンチに下がった。満身創痍の状態ながら、バックアップを務めていたチアゴ・モッタが早々と警告累積で出場停止になったため、無理を押しても出ようとしている状況のようだ。
「ドイツ戦では、『だいたい良くなった』では不十分。120%のパフォーマンスを発揮することが求められていている」と、コンテ監督はデ・ロッシに無理をさせないことを示唆していた。しかし現実に言って、アンカーのできる存在は不在である。
そしてドイツ戦こそ、アンカーの安定したプレーが必要とされる試合はない。このポジションを軸に、全体がコンパクトなポジションを取れなければ、ゾーンの隙間でトーマス・ミュラーに動き回られ最終ラインが瓦解するのは目に見えている。デ・ロッシを出すのか、そうでなければほかに奇策を考えて中盤のコンパクトネスを保たさせるのか。コンテとしては悩みどころだろう。
「この試合に勝ったほうがユーロの優勝を決める」。ヨアヒム・レーヴ監督は高らかに宣言した。その言葉通りの熱戦に期待したい。
(文:神尾光臣)
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