イタリアが狙うドイツの誤算
事実、スペインの中盤のプレスは思いのほかルーズで、イタリア戦ではこぼれ球をほとんど相手に拾われていた。少なくともこういうルーズさは、今のドイツは見せない。戦術的に完成されている相手と見るからこそ、コンテは警戒するのである。
ただ、イタリアとて3月の親善試合の頃の彼らではない。あの時は攻めに行っていろいろなことをテストしていたが、本大会では守備から入る姿勢を明確にしている。そして攻撃においても、ポジションごとの役割をもっと明確にしている。
最終ラインをビルドアップに参与させる比重を強め、中盤は運動量とプレスの強度、前線への飛び出しを重視。最前線ではグラツィアーノ・ペッレが体を張ってポストプレーを続け、センターラインに一本筋を入れる。このようにして組織的に組み立てを図り、ただ守り固めるだけのチームになっていないのが今のイタリアである。
もしドイツ陣営がこれを見誤り、この戦術的なメカニズムの破壊を怠れば、カウンターの餌食になる可能性も出てくる。現在までのところ4試合1失点とイタリアの守備陣は非常に落ち着いているが、これを武器に相手を前に引き出し、速攻にはめる形を作りたい。
しかし今回、イタリアはこの守備という点で大きな不安を抱えて臨むことになる。アンカーを務めてきたダニエレ・デ・ロッシが出場できるかどうかが分からないのだ。
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