3得点すべてに共通点。明らかな狙いを持ったウェールズ
55分にベイルの縦パスからラムジーがつないでカヌのゴールで逆転。さらに85分にはリスタートから途中出場のヴォークスが決めて3-1。下馬評を覆してウェールズがベスト4入りを決めた。
この試合の90分間を見ても、確かに選手の「個の力」はベルギーが上だった。随所に見せるプレーは、まさにワールドクラスの質だった。その一方で、やはり「組織力」ではウェールズが上回っていたといえる。
例えば得点シーンを見ると、ベルギーがナインゴランの技術のみが集結したゴールだったのに対して、ウェールズの1点目はカヌによる右サイドの突破から得たCK、2点目は右サイドのベイルが縦に出したロングパスが起点、3点目は右WBグンターのアシスト。全てが右サイド、ベルギーにとっての左サイドを起点としたゴールだった。
ベルギーは前述の通り、左CBのフェルマーレンと左SBのフェルトンゲンが不在。代わって左CBにデナイエル、左SBにヨルダン・ルカクが入ったが、ともに21歳。まだまだ経験は浅く、ベルギーにとっての“穴”となっており、ウェールズはそこを見逃さなかった。
これはチームとしてのゲームプランが確立されている証であり、組織力の高さを示すもの。ウェールズには、この一戦での明らかな狙いが見えたが、試合の展開を読めず流れをつかめなかったベルギーは組織力が欠けていた。
EURO初出場のウェールズは、ついにベスト4まで上り詰め、次の対戦相手はポルトガル。ベスト8進出チーム中、組織力を持たず選手の個の力で勝ち上がってきたのは、今回のベルギーとポルトガルの2チームのみ。
クリス・コールマン監督による的確なゲームプランとチーム一丸となった守備、そしてギャレス・ベイルという圧倒的な個の力に牽引される組織力。この2つを併せ持つウェールズの戦いは、最高の舞台まで続くのかもしれない。
(文:海老沢純一)
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