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EURO2016 8年前

ウェールズ代表の「覚醒」を支える苦闘の歴史。英雄の死を乗り越えた“ドラゴンズ”の野望【東本貢司の眼識】

ウェールズ代表は、EURO初出場ながらグループステージを首位で通過し、北アイルランドとの英国対決も制してベスト8まで進出した。しかし、今大会の“覚醒”を支えるのはウェールズが歩んできた野望と苦闘の歴史でもある。かつてチームを率いた幻の英雄ギャリー・スピードのためにも、“ドラゴンズ”は運命のめぐり合わせと言えるベルギー戦を迎える。(文:東本貢司)

シリーズ:東本貢司の眼識 text by 東本貢司 photo by Getty Images

ウェールズ代表が歩んできた野望と苦闘の歴史

ウェールズ代表
今大会で覚醒するウェールズ代表【写真:Getty Images】

 二つのアイリッシュ代表チームが健闘むなしく敗れ去った後、破滅的なイングランドの敗退と続いて、今や希望の拠り所はウェールズのみとなってしまった。

 結果論などではなく、ここまでの4ヶ国の戦いぶりを振り返ってみたときのウェールズのしぶとさ、すなわち、傍目には劣勢に見える局面でさえ何かしら、反発への余裕、余力のようなものを感じさせてくれる頼もしさからすれば、ごく順当な成り行きだったと言えるのかもしれない。

 それだけ、現ウェールズには世界と台頭に渡り合える実力が育まれつつあるのではないか。あえて評するなら、伝統に培われた真っ当なる潔さの覚醒。それを支えるは、「ドラゴンズ」が歩んできた野望と苦闘の歴史、そしてある国民的悲痛な事件とその余韻――。

 FAW、すなわち「ウェールズフットボール協会」が誕生したのは、宗主国のFAカップ創設に遅れること4年後の1876年。北部レクサム市のビジネスマングループが、イングランドとスコットランドのフットボールにおける成功とそれに伴う商業の活性化に目をつけ、クラブチームを結成しようとしたのが契機となったとされる。

 しかし、そうして始まったウェールズ・リーグはレベルの点でいっかな及ばず、そこで一部の有力クラブは兄貴分のリーグに参入することに。今でも、同国を代表する3大クラブ、カーディフ、スウォンジー、レクサムはイングランドリーグに所属している。以来、同リーグ二線級の域をさまよいながらも、唯一、カーディフが1927年のFAカップを制し、史上希な例としてこの名誉あるカップをウェールズに持ち帰っている。

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