突然の代表引退宣言で世間を驚かせたメッシ
「自分にとって代表はもう終わった」
コパ・アメリカ・センテナリオ決勝でPK戦の末チリに敗れ、23年ぶりの国際タイトル獲得という悲願を達成できなかったアルゼンチン。PKを失敗したリオネル・メッシは明らかにチームメイトの誰よりもショックを受けており、ピッチで大粒の涙を流したあと、ミックスゾーンで代表引退を宣言して世間を驚かせた。
93年のコパ・アメリカ優勝から無冠のトラウマに悩まされるアルゼンチンは、以後7回ものファイナルで敗れ去っており、メッシが出場したのはそのうちの4回。幼い頃から究極の負けず嫌いで、草サッカーでも自分が勝つまで何度もゲームを続けたがったというメッシにとって、4度の決勝で敗北を味わう屈辱と絶望感は計り知れないものに違いない。
昨年のコパ・アメリカ決勝でアルゼンチンが敗れ、国内でメッシに対する批判が集中し、「代表ではメッシは不要」という意見まで飛び出した時、元アルゼンチン代表監督のカルロス・ビラルドがこんなことを言っていた。
「3~4年前からメッシを叩き過ぎる傾向があるが、このままではいつか(代表でプレーすることに)疲れて、もう2度と来なくなる。そんなことになったら我々は、戻って来てくれと跪いて懇願しなきゃならなくなるぞ。世界一の選手を、そう簡単にお払い箱にすることはできない」
ビラルドの予告どおり、メッシは去ってしまった。そして近いうちに、これまた予告どおり、跪いて懇願しなければならないことになる。
そこで問題だ。メッシを説得できるのは誰なのか。現時点で考えた場合、少なくとも気心知れたチームメイトたちではない。メッシが最も信頼するセルヒオ・アグエロもハビエル・マスチェラーノも、一緒に代表引退を考えたほどだ。彼らはメッシの気持ちを誰よりも理解している仲間であり、引退宣言が決して軽はずみな、一時的な感情によるものではないことを知っている。
タタ・マルティーノ監督でもない。タタは人間的には素晴らしいが、ピッチ内外において代表選手たちを納得させる権威は決定的に欠如している。指導者としての手腕も問われているところで、五輪を指揮したあとも続投するか(させてもらえるか)どうかは定かではない。