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Jリーグ 8年前

鹿島の“8番”・土居聖真。役割とともに引き継がれる背番号。紡がれる常勝の伝統

text by 藤江直人 photo by Shinya Tanaka, Getty Images

稀有な得点感覚が発動した追加点のシーン

 172cm、63kgとやや華奢なボディに搭載された土居の稀有な得点感覚が発動されたのは、1点のリードで迎えた前半37分だった。

 自陣でこぼれ球を拾った柴崎が仕掛けたカウンター。左サイドに開いたFW金崎夢生から再び柴崎へわたったボールは、ペナルティーエリアの左側、ゴールラインぎりぎりから中央へ折り返される。

 ニアサイドへ飛び込み、ダイビングヘッドを狙ったのは土居。ボールは枠をとらえることなく無人の右サイドへ流れたたが、ここで流れを途切れさせないのがアントラーズの真骨頂だ。

 ボールをキープするMF遠藤康の前方のスペースへ、金崎がすかさずスライドしてくる。縦パスを受けた直後に素早く反転して、MFダニルソンのマークを巧みに外す。

 ゴールへ迫ってくる金崎を止めようと、DF中村北斗が慌てて間合いを詰めていく。それまで中村がいたニアサイドに生じたスペースを、土居は見逃さなかった。

「ムウ君(金崎)がいい形で抜け出して、自分も一度中へ入る振りをしてから相手のマークを外した。そこをよく見ていてくれていたので」

 DFキム・ヒョヌンの背後を突いて一度気配を消し、すぐに弧を描くような動きをしながらキムの前方へ姿を現す。死角を突かれ続けたキムはまったく反応できない。

 ほぼノーマークの状態から、金崎がマイナスの角度へ折り返したパスに土居が右足を合わせる。ゴール左隅へボールが吸い込まれていった瞬間に、事実上、勝負は決した。

 逆転勝ちで初めて首位に立った前節のヴィッセル神戸戦。土居は前半アディショナルタイムに貴重な同点ゴールを決め、チームの士気を一気に盛り上げている。このときもドリブルでペナルティーエリア付近へ迫り、金崎とのワンツーからゴール前に抜け出していた。

「ムウ君と2人だけ崩せる形がここ数試合、続いている。攻撃パターンのひとつになってきているので、これをセカンドステージでもっと、もっとよくしていければと思います」

 最後の4試合で4ゴールを量産。通算でも6ゴールと、トップの金崎の8ゴールに続く結果を残した土居だったが、決して順風満帆なシーズンを送ってきたわけではなかった。

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