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4-4-2の“天敵”、バルサスタイルの出現。隙間でのポゼッション。反定立としてのアトレティコ【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

対抗策の普及によるブロック崩しの鎮静化

アトレティコ型の4-4-2を採用しているアイスランド代表
アトレティコ型の4-4-2を採用しているアイスランド代表【写真:Getty Images】

 開催中のユーロ2016ではイタリアが5バック型、イングランドを破ってベスト8入りしたアイスランドはアトレティコ型である。アイスランドはサイドから攻め込まれたときにはSHが下がって4+1のラインを形成し、バイタル・エリアだけでなく「ニアゾーン」(CBとSBの間)も消している。

 ちなみにコパアメリカ・センテナリオで優勝したチリは、ブロック守備の系統とは異なる独自路線。引いてゾーンのブロックを固めるのではなく、早めにマンツーマン的に相手をつかまえて、運動量と球際の強さで奪いとる。1対1でのデュエルの強さを前面に押し出す守備戦術は、ビエルサ→サンパオリと同じ戦術志向の監督を続けてきた成果がピッツィ監督になっても受け継がれていた。

 ディフェンスライン以外はゾーンを埋める発想の守りではなく、従ってゾーンの弱点であるバイタルもニアゾーンもほぼ存在しない。デュエルで勝利できているかぎりティキ・タカは天敵ではないわけだ。もちろんデュエルに負ければ一気に崩壊する危険があるので1対1の強さが前提になる。

 スペイン勢を中心に猛威をふるったブロック崩しも、ブロック強化策の普及とともに沈静化された。ハードワークの4-4-2でプレミアリーグを制したレスター、ユーロにおけるアイスランドの躍進、チリのコパアメリカ連覇など、個々の攻撃力で特別優れていないチームでも大戦力のポゼッション型チームを打ち破るケースが増えている。

(文:西部謙司)

【了】

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