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4-4-2の“天敵”、バルサスタイルの出現。隙間でのポゼッション。反定立としてのアトレティコ【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

登場のタイミングが絶妙だったティキ・タカ

 90年代にACミラン型の4-4-2が普及するのとほぼ同時期に、ヨハン・クライフ監督に率いられたバルセロナは緻密なパスワークのスタイルで“ドリームチーム”と呼ばれていた。後の“ティキ・タカ”のルーツがこの時期のバルセロナである。クライフからグアルディオラへ、人へのポゼッションから隙間へのポゼッションへ。4-4-2の天敵は同時進行で進化していたわけだ。

 ミラン型ほど世界的に普及しなかったのは、ミラン方式が守備戦術であるのに対して、バルセロナは攻撃力が柱になっていたからだ。つまり、技術がないと成立しないサッカーなので簡単に模倣できないし、付け焼き刃では効果も期待できない。グアルディオラ監督時代の成功を目の当たりにしてから、多くのチームがバルセロナを模倣したが同じ水準に達したチームは1つもなかった。

 余談だが、現在のバルセロナ自身がチャビ、イニエスタ、メッシ、ブスケツで組んでいた時代のティキ・タカを越えられていない。一貫した哲学と戦術の下に育てられてきた選手たちのセットでないと、あれほどの効果は出ないのだと思う。

 ティキ・タカはその登場のタイミングも絶妙だった。4バックのゾーンシステムが世界中に普及しきった段階で出てきたため、スペイン(バルセロナ)には戦術的に敵がおらず、1人勝ちの状態が続いた。2014年ブラジルW杯で優勝したドイツもグアルディオラ監督のバイエルン・ミュンヘンを土台にしていたので、2大会連続でほぼ同じ戦術のチームが世界一になったといえる。

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