観る者を熱くさせる古き良き“英国式フットボール”
スペインやドイツといった今大会の優勝候補に挙げられるチームは類い稀な技術を持ち、華麗な連係と緻密な戦略で相手を圧倒する。現代のサッカーでは、そういったチームが理想的とされており、やはりそれは事実だろう。
一方で、このウェールズと北アイルランドによる“バトル・オブ・ブリテン”第2戦は、それらとは対極に位置する、いわば“肉弾戦”。主将のCBアシュリー・ウィリアムズは、左肩を負傷し交代の指示が出されようともベンチを一喝してピッチに立ち続けた。
左肩に問題を抱えているのは、立ち姿からも明らかであり、場合によってはチームの“穴”ともなりかねないため、批判の声が上がる可能性も低くはないだろう。
しかし、ウィリアムズを含めてこの試合で選手たちが見せた魂を込めたプレーこそ、古き良き“英国式フットボール”の魅力であり、観ている者を熱くさせる力がある。
そして、普段レアル・マドリーという世界最高峰のクラブでプレーするギャレス・ベイルだが、ウェールズでの姿はトッテナム時代を思い起こさせるものであり、彼の魅力はそういったチームでこそ輝くのかもしれない。
初出場でベスト8と未知の領域へと踏み込んでいくウェールズが、この先どのような戦いを見せるのか。数十年後この大会を振り返った時、ギャレス・ベイルがウェールズの伝説として語られるのか。まだまだ目が離せない。
(文:海老沢純一)
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