“因縁の一戦”、行く末はいかに
問題だったのは、このときのギャラスへのアシストとなるパスを出したティエリ・アンリがあきらかなハンドをしていたことだ。これによってアンリは(W杯行きを実現したにもかかわらず)フランスメディアからも厳しく糾弾され、以来彼はフランスには寄り付かなくなってしまったのだが、あの試合をスタッド・ド・フランスで見ていた筆者にとっても、近年で最大のハートブロークンな試合だった。
あの試合のアイルランド勢の戦いぶりは、「闘魂」が服を着てプレーしているかのようだった。あそこまでアンリが非難されたのは、敵方のフランス人たちから見ても、アイルランドの選手たちのパフォーマンスが素晴らしかったからでもあった。
案の定、ラウンド16の組み合わせが決定した瞬間から「リベンジか!?」とメディアは盛り上がっている。現代表であの試合に出場していた選手は、ロリス、サニャ、エヴラ、ジニャック、そしてシソコとマンダンダがベンチメンバーだった。
フランスが自国開催の大会で優勝というのは美しいストーリーだから、ここで勝ち抜けてほしい気もするが、やっぱりアイルランドには勝ってほしい。どちらにしても、感情的な一戦になるのは間違いない。それにしても、ここでアイルランド戦を迎えるあたり、やはり今大会のレ・ブルーは、ドラマチックな展開を運命付けられたチームだ。
(取材・文:小川由紀子【パリ】)
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