期待を集めた2大エース、グリーズマン、ポグバ
ホスト国フランスは、グループA首位で決勝トーナメント進出を決めた。目標どおりの結果ではあった。けれど必ずしも想定どおりではなかった。では今回のフランス代表にとっての「想定どおり」とは何か? それはグリーズマンとポグバ、現レ・ブルーの2大エースの活躍でチームを勝利へと導くこと。デシャン監督以下代表スタッフの思惑はさておき、世間が期待していたのはそんなシナリオだったのだ。
アトレティコでも主力としての地位を築きつつあるグリーズマンは、まさに現代表の若々しくフレッシュなイメージを象徴していて、とくに若者ファンからの支持は絶大だ。先日のレアル・マドリーとのチャンピオンズリーグ決勝の際、フランスメディアは『ジダンのレアルVSグリーズマンのアトレティコ』のレ・ブルー新旧スター対決でファンの興味を煽った。
観戦した近所のバーでは、それぞれ自分のクラブがあるスペイン人客以外の地元客は圧倒的にアトレティコ派が優勢だった。店の兄ちゃんも、「オレは断然アトレティコだ!」というので「グリーズマン?」と聞くと「もちろん! 奴こそがレ・ブルーだぜ!」とサムアップ。
ファンだけでなく、フランス人の仕事仲間に聞いても、みながグリーズマンを「いまのフランス代表のキープレイヤー」に挙げた。その裏には、ベンゼマが出場不可となり、エースの席が不在になったという背景もあるにはあるが、少なくともここまではベンゼマの不在を恋しがる声は聞こえてこない。
ポグバについても同様で、実力、個性とも強力な彼が、チームをけん引する存在であると誰もが期待していた。ところが。初戦のルーマニア戦ではこの2人が不発だった。いや、不発というより存在感がいつもよりずっと薄かった。
開幕戦の数日前だったか、デシャン監督が「期待はわかるが、あまりポグバにプレッシャーをかけないように」とメディアに釘を刺していたときには、「あの男がプレッシャーに弱いタイプか?」と半信半疑だったが、自分に絶大な期待がかかっての、自国開催のEURO、その開幕戦、というステージに、意外にも彼は緊張していたのだった。
これまでの、時に奔放で豪快な彼のダイナミックな動きはすっかり鳴りを潜めていた。だが、振り返れば最近の試合はすべて、プレッシャーの低い親善試合だった。