決勝T初戦はスペイン。課題は「攻守の切り替え」
そもそも、ボールを奪った地点から手数を掛けずに素早く縦を突く攻撃は、コンテが代表監督となってから一貫して作り上げていたものだった。こうして積み上げられた戦術上のスキームがあるからこそ、少ないチャンスで点を取れたのである。
リーグ戦ではそれぞれの所属チームで控えに甘んじていたザザやエデルの招集が決まった際は、メディアやファンから多くの批判があった。しかし常連メンバーとして戦術を理解できていたことが優先されたわけで、結局それは正しかったということになる。
「グループリーグの1位通過など期待されていなかった」と、コンテ監督以下アッズーリの面々は胸を張っていた。ただ決勝トーナメントに向けて不安はないわけではなく、グループリーグの時点でも完成度の低さを晒していた面はあった。
それは、攻守の切り替えの拙さだ。深く構えて相手の攻撃を奪ったはいいが、そこからパスを繋ごうと中盤にミスが出て、前線に収まる前にボールをロストしてしまう。これまでの試合でイタリアは相手にポゼッションを譲りながら粘り強く守っていたが、それは意図せずにボールを失い続けたからという面もある。
タレントは揃いながらチームとしての規律はルーズだったベルギーなどと違い、スペインやドイツは前線の守備もよくやり、ショートパスで敵陣を揺さぶるスピードも速い。その時技術に差のある中盤より前の選手たちが、ボールを収めてカウンターを演出することが出来るのかどうか。真の力量が問われるのはここからである。
(文:神尾光臣)
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