選手間で共有された攻撃への意識
ただコンテ時代のユベントスを振り返ると、決して伝統的なカテナッチョ戦術を取っていたわけではない。最終ラインを引くとは引いても、3バックに高い位置を取らせることを志向していた。今回のEURO予選中も、4バックも試しながら基本的には攻撃志向で戦っていたのである。本番に合わせ、チームや相手の状態を見て、きっちりと匙加減を変えたことが奏功したと言える。
しかし、ただ守り倒すだけでは当然勝てないわけで、点を奪うための戦略と戦術的な仕組みが伴っていたことにも注視しなければならない。実際イタリアがここまで奪った3点は、単なる縦への放り込みから生まれたものではなかった。
例えば、ベルギー戦の1点目。最終ラインがビルドアップを掛ける際、それに呼応してインサイドハーフのエマヌエーレ・ジャッケリーニが前線へ飛び出し、DFのギャップを突いて裏のスペースへ走りこむ。そこからノープレッシャーだったボヌッチが、正確なロングパスを通して得点へと導いた。「この動きは練習から準備していたものだ」とジャッケリーニは語っていた。
スウェーデン戦の決勝点の時も然りだ。起点となったのはロングスローという奇襲だったが、シモーネ・ザザは動いてこれを呼び込み、動いたことで空けたスペースにヘディングを落としてエデルを走らせている。縦へのスピーディな攻撃を組み立てる上での共通意識が、選手間でちゃんと共有できていたことの証である。
コンテ監督はフォーメーション練習で最終ラインのビルドアップから攻撃の簡潔に至るまで、緻密な動きをパターン化させる。もちろん試合ごとには緻密な相手の戦術分析も加わり、攻撃はより綿密なものとなる。
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