アンカーに求められるカウンター対処力
ポルトガルはやや特殊だが、スペインがモラタからアドゥリスに切り替えると、ポゼッション型のチームはすべてハンマー型ストロングスタイルの1トップということになる。
パスワークが武器のポゼッション型とはいえ、フィニッシュまでパスワークで崩しきるのは簡単ではない。パスワークで崩しきってのフィニッシュに固執するなら、ジルーやマリオ・ゴメスのような1トップは向いていないのだが、単純なクロスボールやこぼれ球狙いを採り入れるなら長身頑健な1トップがいたほうが良い。
中盤の数的優位については、かつてバルセロナがやっていたようなCFを下げる形ではなく、SBの中盤常駐化とMFの横スライドでまかなっているのでトップを下げる必要はなく、ライン牽制のためにはむしろ下げないほうがいいのだ。
この戦術スタイルの弱点はSBがいないことである。攻め込まれれば戻るけれども、素早くカウンターされるとSBは置き去りになる。2人のCBとアンカーの3人でカウンターに対処しなければならない。カウンター対処能力は必須で、これがないとポゼッション70パーセントで敗退するケースが起こりうる。ダイヤー(イングランド)、カンテ(フランス)はカウンターの掃除人として優れている。アンカーのカウンター対処能力は、1トップの能力とともにポゼッション型の成否を左右しそうだ。
(文:西部謙司)
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