包囲戦での強さ、典型的なのはジルー
包囲戦で生きるFWはクロスボールを得点に変えられるタイプである。競り合いの強さ、高さを武器とするFWだ。包囲戦のチームのクロスボールはタッチライン際からではなく、ペナルティーエリアに近づいてからのクロスが多い。そのため精度は期待できるが、すでに相手は引いているのでペナルティーエリア内はDFの数も揃っている。つまり、マークされやすい状態なのでDFと競り合って勝てるFWが必要になる。
ジルー(フランス)はこのタイプの典型だ。開幕戦ではパイエのピンポイントクロスをGKに競り勝ってゴールした。クロアチアのマンジュキッチはジルーよりも機動力があるが、やはりゴール前のヘディングを得意とする大型FWだ。
ケイン(イングランド)も万能型。ヴァーディーよりも長身でボックス内での空中戦は期待できる。しかし、ジルーほどボックス内に特化したタイプではない。チームもポゼッション志向ながらドイツ、スペインほどのパスワークはない。どちらにしてもやや中途半端な感は否めず、ケインかヴァーディーかはコンディション次第になるかもしれない。
特殊なのがポルトガルだ。第1戦と第3戦がロナウドとナニの2トップだった。
ロナウドはレアル・マドリーでお馴染みのとおり左ウイングを定位置としてきた。ナニも本来はウイングプレーヤーだ。ところが、ポルトガルも包囲戦を基調にしているので、ボックス内に空中戦に強いFWが必要になっている。
ロナウドはヘディングが強い、もちろんそれだけのFWではないわけだが、チーム状況からロナウドへクロスを合わせるのが重要な攻め手になっている。しかし、ロナウドにヘディングだけさせるのはもったいなさすぎるので、ナニとの2トップにしてどちらかがトップに出る形にしたのだろう。ナニもヘディングは強く、ロナウドほどではないがクロスを生かすことはできる。