出場国拡大でレベル低下懸念もハイレベルな戦いの連続に
その過程の中で、36分にはPKを与えるもドラゴビッチがシュートを外す幸運にも恵まれたが、それも実力のうち。これまでの2試合で見せてきた高い集中力と献身性でゴールを死守するサッカーは、最後に勝利を手にした。
ハンガリーもアイスランドもこの最終節ではプラン通りの戦いができたはずだ。
この6試合を終えたグループFの最終結果は1位ハンガリー、2位アイスランド、3位ポルトガル、4位オーストリア(敗退)。本来であれば苦戦を強いられるはずの2チームが上位につける結果となった。
グループステージの段階で、ポルトガルはチームとして成熟されていない状態であり、最終節でも焦りからかチグハグな連係を見せるシーンもあった。オーストリアに関しては、自らが強者なのか弱者なのか掴みきれないまま敗退となった印象だった。
一方で、ハンガリーはキャプテンのジュジャーク、ベテランのゲラとGKキラーイを中心に攻守に統率の取れた戦いを見せ、アイスランドは勝利を信じて迷いのないプレーを続けていた。
高額ではない選手でも、全員が1つの方向を向いたチームは力を発揮しやすい。市場価値で、今大会の出場チーム中最下位となるわずか30億円のハンガリーと、自国サッカー協会登録のプロ選手わずか100人というアイスランドが繰り広げた戦いは、改めてサッカーの本質を伝えていた。
ただ、決勝トーナメントからは全く別の戦いとなる。3分けながら3位で拾われたポルトガルも、クリスティアーノ・ロナウドが2得点を決めて復調のきっかけとなる可能性は高く、チームとしても一気に上昇気流に乗ることができるかもしれない。
ベルギーと対戦するハンガリー、イングランドと対戦するアイスランドはこれまでと同様の戦いが通用するのか。出場国拡大によって、レベルの低下を懸念する声もあったEUROだが、ここまではハイレベルな戦いの連続に加えて新たなチームの奮闘が光り、成功だったといえるだろう。
(文:海老沢純一)
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