韓国時代には「重戦車」のニックネームも
筋肉の鎧をまとった171cm、73kgのボディには、規格外のパワーだけでなく、ラテンの血をルーツにもつ柔軟かつ巧みなボールコントロール術も搭載されている。それらがようやく日本の地でも開放されてきたことになるが、エスクデロ自身はまだまだ満足していない。
「だんだん上手くいくようになってきていますけど、僕がイメージしているプレーと周りがイメージしているプレーがまだ合わないところがる。たとえば僕がボールをもらいに行くときには、すでに次のプレーが見えているんですよ。それを『距離が近いから』とか『背後にマークがいるから』という理由で、パスが出てこないときがある。どんなにマークされようが問題ないので、みんなには何度も『それでもボールを預けてくれ』と要求しているところです」
果たして、ヴェルディ戦ではイメージが完璧にシンクロする場面が訪れている。両チームともに無得点で迎えた前半32分。自陣からカウンターを仕掛けた直後だった。
韓国時代には「重戦車」なるニックネームをつけられたドリブルで、エスクデロが縦へ突き進む。センターサークルを超えたあたりで、左側をフォローしてきたMF堀米勇輝へパス。エスクデロはそのまま前へ進むも前方をDF井林章、後方をMF中後雅喜にはさまれる。
それでもエスクデロはリターンパスを要求する。パワーで井林を吹っ飛ばし、スピードで中後をかわしながらパスを受ける。一気にバイタルエリアへ迫ってからは、細かいボールタッチから個人技を繰り出す。
右へ進むと見せかけて、素早く左へ切り返す。必死に追走してきた中後が、ゴールマウスでシュートストップの体勢に入っていたGK鈴木椋大が、ものの見事にフェイントに引っかかる。
このとき、エスクデロの脳裏にはいまも国籍をもっているアルゼンチンの英雄、リオネル・メッシのプレーが思い描かれていた。
「最近はコパ・アメリカにはまっていて、今朝も早起きしてアルゼンチンが大勝した試合を見ていたんですよ。メッシはここぞという場面で、必ず相手の逆を突きますよね。あの場面で僕は中へ行く振りをしてから外へ切り返したんですけど、そこで勝負は決まりましたよね。最近はずっとメッシを見ているから、自然と出せたんですかね。僕がイメージした通りのプレーをゴメ(堀米)もやってくれたので、あとは僕が決めるだけでした」