「一人だけ次元が違う感じですよね」
味の素スタジアムのメインスタンド側の地下1階に設けられた取材エリアには、両チームの首脳陣や選手だけでなく、社長とはじめとするフロントやチームスタッフ、強化関係者が大勢行き来する。
後半19分と30分の連続ゴールで、東京ヴェルディが京都サンガを逆転で下した19日のJ2第19節後もいつもと変わらない光景が生まれたなかで、交わされた会話には趣がやや異なるものも含まれていた。
「セルヒオ、やばくないか?」
5試合ぶりとなる白星を手にしたヴェルディの関係者が驚きの声をあげれば、4月23日の徳島ヴォルティス戦以来、10試合ぶりに黒星を喫したサンガの関係者も苦笑いしながらうなづく。
「一人だけ次元が違う感じですよね」
勝ち負けを超越したレベルで注目を集めていたのは、サンガの「10」番を背負うエスクデロ競飛王。スペインで産声をあげ、アルゼンチンで育ち、2007年6月に日本国籍を取得した27歳は、開幕直前に加入したサンガにおける存在感をいよいよ不動のものとしていた。
登録こそフォワードだが、実際はワントップのイ・ヨンジェの周囲で自由自在に動き回るトップ下として攻撃を差配する。序盤戦こそ周囲とのコンビネーション不足や左足首の負傷もあって途中出場が続いたが、5月3日の清水エスパルス戦から先発に定着。同時にサンガの無敗記録が継続されていく。
ジュニアユースから慣れ親しんだ浦和レッズを飛び出したのが2012年7月。ACLで準優勝したFCソウル(韓国)や国内カップ戦を制した江蘇蘇寧(中国)で、外国人枠という宿命を背負いながら主軸を務め続けた。その間に身につけた力を、サンガの石丸清隆監督はこう表現する。
「難しいところでボールをもらってもほとんど失わないし、それでいて勝手なプレーが多いかといえば、そういうわけでもない。周りを上手く使いながら前への推進力をもたらしてくれるので、チームとしては大きなプラスになっている」