攻守両面で貢献して、なおかつ点もとるストライカー
――得点も楽にとれる。
宇佐美 楽ですね。こんな楽やったかなと思うぐらいで。コネてコネてシュートしたり、ミドルでぶち抜くようなゴールだけでなく、オフで外してワンタッチでのゴールもあれば、相手もつかみづらいと思いますし。
これまでもオフの動きはやってきたつもりでしたけど、どうすればいいのかはわかっていなかった。中学高校年代ではオンで勝負してきたこともあって見えてなかった部分です。
例えば、カバーニやジェコの動きの意味をレクチャーしてもらったのですが、一発目のオフの動きがその後の布石になっていたりする。オフへの見方が変わってきましたね。
小学生のときには年間200ゴールもしていたそうだ。
「1日に3試合とかやりますからね」
本人はあっさりしたものだが、子供でも200ゴールはかなりとてつもない数字だ。もうそのころから蹴る能力は身についていたのだろう。
ボールを持てば何でもできるタイプのアタッカーが、ボールのないときの動きに進化をみせはじめている。いいポジションをとって、ワンタッチで流し込むだけの「シンプルな得点」も狙うようになった。
ただ、宇佐美の目指しているのは「ロナウド」ではないという。攻守両面で貢献して、なおかつ点もとるストライカーであるようだ。
アルジェリアを率いていたときの起用をみると、ハリルホジッチ監督は対戦相手や状況に応じてタイプの違う選手を使って変化をつけている。4試合すべてに先発した選手は3人だけ、アタッカーでは右サイドハーフのフェグーリただ1人だった。
ガンバ大阪での宇佐美のプレースタイルをそのまま代表に当てはめれば、ポジションはトップ下になると思う。
しかし、最初の2試合ではいずれも左サイドハーフでの起用だった。より運動量が求められるポジションだ。ハリルホジッチ監督が宇佐美に何を求め、今後どう起用していくかは興味深いところだが、宇佐美のゴールは決まっている。
目指すところに到達してしまえば、ポジションや起用法の議論すらなくなっているに違いない。
(文:西部謙司 『フットボール批評issue05』より転載)
【了】