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[INTERVIEW]宇佐美貴史―世界で勝つための武器の磨き方―

アウグスブルク移籍が決まったガンバ大阪の宇佐美貴史。日本代表のなかでも抜きん出た破壊力を持つG大阪のエースストライカーが2015年当時に語った、自身の新しい武器とは。(文:西部謙司 『フットボール批評issue05』より転載)

text by 西部謙司 photo by Kenji Yasuda

「わからないのが、いいんじゃないですか」

宇佐美貴史【写真:安田健示】
宇佐美貴史【写真:安田健示】

「ちょっと、あそこに入れてみようか」

 FIFAのある会議で、出席していたフランツ・ベッケンバウアーが新しい公式球を手にしてそう言った。ポンと革靴で蹴ったボールは少し離れた屑籠にゴールイン。出席者の拍手を誘ったという。

 スター選手の条件を1つだけあげるとすれば「蹴る能力」だと思う。

 ボールコントロール、アイデア、スピード……いろいろな能力はあるけれども、結果を出し続けるからスターはスターと呼ばれるのであって、結果はキックによってもたらされる。パスもシュートも最後はほぼキックで終わるからだ。

 ウズベキスタン戦、宇佐美は正確なシュートで代表初ゴールを記録した。GKに防がれてしまったが、左サイドからカットインしてファーポストを狙ったシュートも“らしい”一撃だった。

 独特のキックの上手さについて聞くと、「説明できないです。振りが小さいとか言われますけど、自分ではまったく意識していないので。普通に蹴っているだけです。まあ、筋力ではないでしょうし、上手くボールに当てられているのか、体をしならせられているのか、自分ではわからないです」

 おそらくベッケンバウアーやペレやマラドーナに聞いても「説明できない」と答えるのかもしれない。そもそもキックはその人固有のもので、人に説明してもあまり意味がない。同じ蹴り方をしても同じボールにはならないからだ。上手く蹴れていれば本人にとっては何の問題もないわけで、体が覚えているものは言葉にはしにくい。

 そして、彼らは上手く蹴れないという経験もたぶんしていない。

「わからないのが、いいんじゃないですか」

 宇佐美にとって、もうそこは問題ではないのだ。シュートが入るのはわかっている。終点は見えているので、そこまでの過程を作っている段階なのかもしれない。

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