入院中のベルルスコーニ会長。待たれる決断
昨年、タイ人投資家ビー・テチャウボン氏と交渉にあたり、48%の株式を売却することで仮契約をつけたはずだった。ところが待てど暮らせどミスター・ビーは買収に必要な4億8000万ユーロを持ってこない。売却話はそのまま立ち消えになり、資本増強を当てにして補強を進めたミランのもとにはさらなる負債がかさんだ。自業自得な面もあるが、外国人投資家への疑念を強めたとしても無理のないところだ。
そして、ミラン自体にも固執がある。ミスター・ビーへの売却の条件に48%という中途半端な値をつけ、経営権をあくまで自分のものとしたこともその表れだ。15/16シーズンには執拗な現場介入で大混乱を招いたが、ミランへの愛情があること自体は否定しようがない。
果たして、中国人資本家がそんなベルルスコーニを篭絡できるのだろうか。誰であるかということは交渉当初から秘密のままで、一連の交渉でも表には出てきていない。
「商いが成立するまでは他言をしないという、中国人の商習慣からそうしているのでは」という見方も現地にはあるが、ガラティオート氏が「真剣な人々だ」という以外はトップシークレット。交渉が進んでいるという事実があるなら、フィニンベスト側にはある程度の情報が流されているものと推測されるが、いずれにせよ公にはされていない。
ベルルスコーニは、今週には退院する見通しだという。交渉の結果を受け、彼が何を言い出すかが注目される。
(取材・文:神尾光臣)
【了】