スペイン代表、デル・ボスケ監督の嘆き
いくつかの会場の郊外にはキャンプ場が設けられているのだが、そこでは各国のサポーターが楽しく集っているというニュースもあった。あるクロアチア人サポーターも、「チェコサポーターと今夜は飲み会だ!」と明るく新聞の取材に答えていた。
彼の母親は、マルセイユでの事件を聞いて心配していたそうだが、「自分たちは楽しくお祭り騒ぎしているだけだから」と無事を伝えたそうだ。
ひとつ気になるのは、たとえば17日のチェコ対クロアチア戦ではサポーター席から発煙筒がピッチに投げ込まれて、試合が4分間ほど中断になり、ニースのファンゾーンでも、18歳の男が発煙筒を使ってけが人を出したが、爆竹も含めて、こうしたものは、セキュリティにひっかからないのだろうか?ということ。発煙筒など、スタンドやファンゾーンに持ち込めるものではないはずなのに、なぜセキュリティゲートで弾かれないのか?
人を怪我させることができる危険物を、いとも簡単に群衆の中に持ち込めてしまう状態というのは、恐ろしい。この実態については、またの機会に検証してみたいと思う。
スペイン代表のデル・ボスケ監督は、「(フーリガンの暴動が)サッカーのイメージと結びついてしまうのは悲しい」と嘆いていたが、そのとおりだと思う。そして今回は、日頃からの暴力行為への恐怖と鬱憤が、結びついてしまってさらにエスカレートした。
この後はもう暴動事件の話題などなしに、純粋にサッカーの熱戦だけを堪能できると願いたい。メディアの人気記事欄が、試合の様子を伝えるレポートで埋まるように。
でないと、ピッチ上で懸命にプレーする選手たちに申し訳ない。
(文:小川由紀子)
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