チームのスタイルに正解なし。勝利を信じるアイスランド
小心者の定義をどこに置くのかは分からないが、アイスランドは2試合を通して攻撃面のスタッツでは相手を下回っていたものの、インターセプトはポルトガルの10回に対して18回、ハンガリーの10回に対して12回、ボールクリアではポルトガルの18回に対して29回、ハンガリーの14回に対して29回と守備的な面では上回っていた。
しかし、これは勝利を諦めず戦う意思を持ってプレーしたということの証でもある。90分間押し込まれる展開が続いても決して破綻しなかったのは、アイスランドの選手たちが集中を切らすことなく走り抜いたからこそ。
サッカーにおいて、チームのプレースタイルに正解はない。あるとするならば、それぞれのチームにとって勝利が最も近くなる戦い方こそが正解ではないか。そしてアイスランドは間違いなくそれを実践した。
一部では、守備を重視した戦い方をつまらないとする声もあるが、このアイスランドの選手たちの献身的な戦いを見て心を打たれる人も少なくはないはず。
勝利を目指すことを忘れ、出来もしない攻撃に力を注ぐよりも、どのような相手でも勝利を信じてやるべきことを貫くことが高いプライドを示したといえるのではないだろうか。
開幕前にはポルトガルとオーストリアにとって楽なグループと見られていたが、2戦を終えてどのチームにも突破の可能性が残る最も混沌としたグループとなったF組。その中で、アイスランドはどのような結果を手にするのか、オーストリアとの最終節は見逃せない。
(文:海老沢純一)
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