自身にとって初の世界大会も「自信はあります」
迎えた6月14日。ガンバ大阪のDF藤春廣輝とともに、オーバーエイジ枠での招集が内定したことが正式に発表された。30歳になる2018年に開催されるワールドカップ・ロシア大会出場を最大の目標にすえていた塩谷は、自身にとって初めてとなる世界大会を「自信はあります」と心待ちにしている。
「ワールドカップ・ロシア大会を目指すうえで、絶対に自分にとってプラスになる。いろいろなポジションができるところを評価されたと思っているし、チームに必要とされるポジションで自分のプレーを表現したい。ロンドン五輪の開催中に広島に移籍したことで、自分のなかでステップアップできたと思っている。あれから4年がたって、世界で自分がどこまでやれるのかを試すいい機会ですし、なによりも国を背負って戦い、結果を求めていきたい。経験したくてできることではないし、出たくても出られる場所でもないので」
サッカー人生における恩師として、柱谷と森保の2人を真っ先にあげる。オーバーエイジでの招集が内定して、初めて迎えた15日のFC東京戦前。塩谷は柱谷に電話をかけて感謝の思いを伝えた。
「本当におめでとう。しっかりと頑張ってこいよ」
静かな口調ながら熱いエールをもらった柱谷からホーリーホック時代に伝授された言葉を、塩谷はいまもピッチ上で表現している。
「自分は熱い気持ちを表に出すタイプではないので、ピッチの上では『頭はクールに、心は熱く』を実践しています」
加入2年目から塩谷をレギュラーとして抜擢し、その後も厚い信頼を寄せている森保は、リオを経由してロシアへと、その背中をさらに力強く押している。
「ウチにきた当初は試合に出られず、難しい時期がありましたけど、それでも地道に努力してくれて、貪欲に向上心をもち続けてくれたことが実ったと思っています。ただ、僕は彼がA代表にもごく自然に選ばれて、そのなかでもレギュラーを張れる選手だと思っているので」
1993年10月の「ドーハの悲劇」をともに戦い、残酷な幕切れに涙した2人の元日本代表戦士の薫陶を受け、無名の存在から何度もターニングポイントをへて駆け上がってきたシンデレラボーイは、感謝の思いを胸に刻みながら4年に一度のスポーツ界最大の祭典に臨む。(文中一部敬称略)
(取材・文:藤江直人)
【了】