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リバプールからサッキのミランへ。4-4-2戦術の発展と、ゾーンディフェンス+プレッシング【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

ゾーンディフェンスとプレッシング

 ラインコントロールの緻密さと大胆さは、目を見張るものがあった。それまでにも一気にラインを押し上げるオフサイドトラップは使われていたが、ミランの場合はコンパクトさの維持が目的であり、相手へのプレッシャーのかかり具合やボールの状態によって、3~5メートルの上げ下げを繰り返すラインコントロールなのだ。

 緻密なラインコントロールによって全体をコンパクトにしたことで、守備をするスペースは限定できる。その中で猛烈なプレッシングを敢行した。守備エリアを限定できたことが大きいが、高いインテンシティーを養成するためにミランは「鳥かご」と呼ばれる小さめのフィールドを作り、インテンシティーの高い状態での攻守に慣れさせていた。サッキ監督によると「自分の発明は戦術ではなく練習方法」だそうだ。

 プレッシングは74年ワールドカップでのオランダによって有名になっていたが、オランダが常に「ボール狩り」を行っていたわけではない。ミランの場合、コンパクトな状態を維持したことでほぼ90分間、相手に対してプレッシングをかけ続けることを可能にした。プレーのテンポは上がり、強度も格段にアップ。対戦相手はミランのペースについていけない。ゾーンディフェンスとプレッシングをセットにしたミランの新戦術の効果は衝撃的で、やがてこの戦術は世界のスタンダードになっていく。

(文:西部謙司)

【了】

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