古豪に現れた“異色の新人”が起こした奇跡
異色の新人、コナー・ワシントンの活躍に期待がかかる【写真:Getty Images】
だが、本気で“ひと暴れ”するには、いわゆる彗星のように登場する意外性のニュースターが欲しい。その期待を担うのが、コナー・ワシントン、24歳(チャンピオンシップ・QPR)。ほんの4年前はノンリーグ、ケンブリッジ州セント・アイヴズという小さな町のチームに所属、50試合53得点の離れ業をやってのけ、階層にして5段階ジャンプアップのリーグ2(4部)、ニューポート・カウンティーの目に留まり、わずか5000ポンドで出世移籍。
だが、ニューポートではまったく結果を出せず終い(39試合5得点)で…と、そこで一つの奇跡が起きる。
ダレン・ファーガソン(サー・アレックスの次男)率いるピータボロが、当時20歳の未知数ワシントンに20万ポンドの値をつけたのだ。2季後、QPRがさらにこの若者を大抜擢したわけだが、その際の移籍金(未発表)の20%が契約上ニューポートに入る約束となっていたおかげで、ニューポートはクラブレコード(!)の移籍金を手にした。
かくて「“英雄”ワシントンの遺産」は同クラブのホーム、ロドニー・パレードの“誇り”となっているのだとか。
プレミアから数えて8つ、9つも下のアマチュアに毛が生えた程度のレベルで(それもたったの2シーズン)しか実績のない若者が、それからわずか4年でプレミア昇格を争うチームの主軸にのし上がり、しかもそのQPRではまだエースの座をつかむにはほど遠い地位にいるにもかかわらず、ユーロ初出場で気勢の上がる代表チームからお声がかかったのだ。
まるで、そう、「奇跡のチーム」としてプレミア初制覇に邁進しているレスター・シティーの大シンボル、ジェイミー・ヴァーディーの“再来”?! なお、ワシントンが生まれ育ったのはイングランドで、両親のどちらかの縁でスコットランド代表権もあるらしい。そして、北アイルランドには住んだどころか、訪れたことすらないという。
異色の新人、コナー・ワシントンがきっと何かをしでかしてくれる…そんな楽しみも膨らむ、“古豪”北アイルランドの今大会である。
(文:東本貢司)
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