久々に国民にサポートされた代表チーム
そこで冒頭の問いかけに戻ると、ディアラが不在となったおかげでカンテという逸材が代表戦の舞台でブレイクすることになるかもしれず、ラミも次第にセビージャでプレーするときと同様の感覚を取り戻して貢献するかもしれない(実際、今季のヴァランはレアル・マドリーではそれほど好調ではなかった)。そうなれば、直前のデシャン監督のプラン崩壊は、転じてプラスになった、ということにもなる。
一方で、これだけここまで当たりの良かった打線が、本戦に限って嘘のように不発に終わり、守備も乱れて総崩れになってしまうパターンもないとはいえない。こういった大会では、往々にして「こんなはずじゃ……」の展開が待っている。
ここ最近にはなかったほど国民のポジティブなサポートを一身に受けているこの代表チームなら、そのエネルギーを糧にして前者の結果を引き出せそうな気はしている。そして初戦のルーマニア戦を勝ち星で乗り越えられたら、先の先までいける可能性はかなり高まるだろう。
つい先日、エリック・カントナが「現在フランスでもっとも優秀な選手の2人、ベンゼマとベン・アルファを招集しないのはおかしい。このような国際大会は、一体感を世界に示す格好の機会なのに」と発言し、『デシャン監督はレイシストである』なる声も浮上。去年からのテロ脅威、セックステープ事件、ベンゼマ問題などの暗い話題にもうひとつ新たな火種が加わった。
しかしそんな陰鬱なことの多い世の中だからこそ、スカっと勝って元気にさせてほしい!とレ・ブルーに期待する声は大きい。……と周りは期待したり非難したりと忙しいが、肝心の選手たちは、無心でサッカーの試合に臨む姿勢でいる。
まずはルーマニア戦。ここが新ジェネレーションのフランス代表の、栄えある第一歩となる。
(文:小川由紀子【パリ】)
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