酒井高徳が指摘するチームの“隙”
仮に後半アディショナルタイムのチャンスで浅野拓磨がシュートを選択し決めていたら、小林悠が槙野智章のクロスにうまく合わせ、同点ゴールを決めていたら、同じ内容でもここまで世間的に“課題探し”の熱が上がらなかったかもしれない。
だが、この試合に関する問題の本質は不変である。ハリルホジッチ監督が掲げるスタンダードをベースとしながら、90分間をどうオーガナイズしていくかということ。その問題点をピッチで強く感じていた選手の1人が右サイドバックで先発フル出場した酒井高徳だ。
その問題点に関して右サイドバックの酒井高徳は「失点に関しては誰がどうこうではなくて、チームとして少しリアクションになってしまった」と振り返る。その酒井が特に問題として指摘するのが、スタートから速いテンポで攻守が繰り返される中でチームに必要以上のアップダウンが起きてしまったこと。
日本は速いグラウンダーのパスと高い位置からのプレス、ボスニアは自陣寄りに構えたところからのシンプルなカウンターという図式で、激しく攻守が入れ替わる場合により消耗するのは日本の方だ。
ボスニア戦はブルガリアより中盤での相手のプレッシャーとサイドの守備がタイトになったこともあってか、ボランチを経由しながら、左右に揺さぶりをかける攻撃も限られた。チャンスだけ見れば宇佐美の仕掛けから長友が追い越し、マイナス気味のクロスに逆サイドから浅野が飛び込む様な良い形もあったが、そのプロセスが単調になっていたことも確かだ。
チームがどんどん前向きにボールをつないで攻め、ボールを失った場所からプレッシャーをかける戦い方は日本代表にかつて無いレベルのインテンシティーをもたらしているが、相対的にアップダウンも激しくなる。
それによる消耗は90分という試合の尺だけでなく、前半は前半、後半は後半の中でも瞬間的にふとした間延びや緩みを生んでしまいやすい。チームの動きに合わせてアップダウンを繰り返すサイドバックの選手はなおさら実感しやすい部分だろう。