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4-4-2システムの起源。リベロ採用と2トップ。4-2-4とワーキング・ウインガーの導入【西部の4-4-2戦術アナライズ】

シリーズ:西部の4-4-2戦術アナライズ text by 西部謙司 photo by Getty Images

4-4-2として有名になった66年のイングランド

【図2】1966年ワールドカップを制したイングランドのフォーメーション。4-2-4の両ウイングが後退したような4-4-2のかたちになっていた。
【図2】1966年ワールドカップを制したイングランドのフォーメーション。4-2-4の両ウイングが後退したような4-4-2のかたちになっていた。

 4-4-2として有名になったのは66年ワールドカップの開催国で優勝国のイングランドだ。ただ、FIFAのテクニカル・レポートによるとイングランドは4-3-3となっている。2トップとされていたのはメキシコで、イングランド戦は1トップだったと書かれている(しかも並びは9-0-1)。とはいえ、このときのイングランドこそ4-4-2の起源といえるだろう。

 4バックの前に守備的MFを起用したことが画期的だった。今日のアンカー役を務めたノルベルト・スタイルズがイングランドの守備における保険になっている。スタイルズの存在によって、相手が3トップでも4トップでも混乱なく対応できるようにしていたわけだ。

 中盤の司令塔はボビー・チャールトン、右にアラン・ボール、左がマーチン・ピータース、そしてジェフリー・ハーストとロジャー・ハントの2トップ。チャールトンの両脇にいるボールとピータースがワーキング・ウインガーで、右のボールは縦の突破を得意としていた。FIFAレポートで4-3-3になっているのは、おそらくボールを右ウイングにカウントしているからだ。

 イングランドの4-4-2はインテルと似ているが、むしろ4-2-4のウイングが後退した形といえる。中盤中央のBチャールトンが攻撃型、スタイルズが守備型というバランスも4-2-4そのものだ。新機軸のキーマンとなったスタイルズはいわゆるダーティーワークの担い手とされている。

 ポルトガル戦では4トップのエースだったエウゼビオを徹底的にマークした。審判に見えないところで顔面を殴っているのを見たという人もいる。ただ、スタイルズは決して頑健ではなく小柄な体格で武闘派のイメージはない。ボールタッチがきれいなテクニシャンなのだ。むしろ知能犯的なタイプで、インテリジェンスと平気でファウルできるメンタルを買われていたのだろう。

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