「代表の底上げにならない」。長友の苦言
それでもハリルホジッチ監督体制発足後はこれまで代表定着できていなかった宇佐美や武藤嘉紀(マインツ)や原口元気(ヘルタ)、リオデジャネイロ五輪世代の遠藤航や浅野ら若手を抜擢し、本田や香川ら主力に組み込もうとしてきた。
だが、国際Aマッチデーの期間しかトレーニング時間が取れないため、チームの幅は思うように広げられていない。本田・香川・岡崎のいずれか2人がピッチに立てば新戦力の融合もスムーズにいくのかもしれないが、今回はまさに飛車角落ち。そのうえで柏木や宇佐美まで下がってしまえば、攻撃面で失速するのもやむを得ないだろう。
「今回は真司や圭佑がいない中で、求められるサッカーの質が少し落ちた」と長友も率直な感想を口にしたように、今のままでは最終予選も本田・香川・岡崎の3枚看板を軸に戦わざるを得ない。それがこのボスニア戦でハッキリしたのは事実だ。しかしながら「このままでは代表のレベルアップ、底上げにつながらない」という長友の指摘も事実である。
準備時間を十分に取れない中、抜本的な解決策は難しいが、それを実践しなければならないのが国家を背負う代表だ。それゆえに、ハリルホジッチ監督も短期間で連携できそうな組み合わせやメンバー構成を摸索していくべきかもしれない。
例えば今回、遠藤航がU-23代表で長く戦ってきた浅野の背後を狙って再三タテパスを供給していたが、同じチームや年代別代表でプレーした人間を近くで絡ませるといった工夫はできる。同じプラチナ世代の宇佐美と小林祐希などもお互いの癖を理解し合っているから使いやすいはずだ。
そうやってピッチ内外で工夫を凝らすしか、チームバリエーションを広げる術はない。フル代表に初の黒星をつけたのは奇しくも指揮官の母国だった。ボスニアは主力の多くを欠きながらも結果を出したことを忘れてはならない。
(取材・文:元川悦子【吹田】)
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