観光都市パリ、評判回復のチャンス
そもそも、パリのど真ん中でファンゾーンをやる必要はどこにあるのか、という声もある。パリには、東にヴァンセンヌ、西にブーローニュという森があり、どちらも競馬場や植物園があるほど広大なスペースだ。(毎年10月に凱旋門賞が行われるロンシャン競馬場もブーローニュの森の中にある)
これら郊外のオープンスペースのほうがファンゾーン開催によっぽど適している、という意見にも頷けるが、フランス、そしてパリのシンボルはなんといってもエッフェル塔。このエッフェル塔を望むロケーションにファンゾーンを設けて、人々が集って楽しむ光景が世界中に発信されることは、フランスが国をあげてこのイベントを盛り上げている、というイメージをアピールする上でとても大事なことなのだ。
とくにテロの標的となったことで安全な観光都市のイメージを失い、実際に観光客も激減したパリにとって、この大会を平和的に執りおこなうことは、評判回復の最大のチャンスだ。
マニュエル・ヴァルス首相は「ファンゾーンは公・民両方の警備スタッフを動員して、完全にコントロール下に置かれた安全な催しとなる」と明言。トータルでおよそ9万人(警官、軍隊など77,000人、民間の警備スタッフ13,000人)の警備員を動員するという。
だが実際のところ、危険性がないわけではない。
パリの同時テロ事件と今年3月のブリュッセルでの爆発テロに関わっていた犯人グループから押収したパソコンには、「EUROの前に事件を起こしてこの大会自体を中止させてやろう」という会話が録音されていたという。つい先日は、アメリカ国務省も、今回のEUROが「武装勢力の標的にされる危険性がある」と警告を発した。オランド大統領も、「脅威はある」と認めている。
また6日(月)には、5月下旬に大量の武器を保持していたことでウクライナで拘束されたフランス人男性が、EUROの期間中にテロ行為を働くためにこれらの武器を整えていたと伝えられた。
25歳のこの若者は、RPG3基に照準器、何百もの雷管、100キロ以上のTNT、カラシニコフ銃が6丁、大量のフェイスマスクなど、総額およそ3000万円相当の武器を車に忍ばせてポーランドとの国境を通過しようとしていたという。