局面を制することが試合の勝利につながる
ブンデスリーガで何年もプレーしている酒井高徳でも純粋なパワーで勝負したら劣勢は否めない相手だが、うまく駆け引きを使いながら守備ではスピードを落とさせてプレーを限定する、攻撃では一歩速くスペースに出て裏を取るなど、ポジショニングや動き出しで有利に立つことで“デュエル”の勝負も優勢に持っていくことができる。
サイドバック同士ということで同サイドのウィングとの協力関係も勝負に関わってくるが、決定機につながる局面の勝負ではやはりハリルホジッチ監督が言うところの“デュエル”が明暗を分ける可能性が高い。
特にボスニア・ヘルツェゴビナの崩しのキーマンであるコラシナツを封じ、逆側でチャンスを作り出すという意味で、酒井高徳が先発チャンスを与えられれば大きな役割を担うことになるだろう。
ブルガリア戦をベンチで見守った酒井高徳はライバルの酒井宏樹や左サイドバックで先発した長友佑都を絡めた攻撃が「上手くスペースを使っていた」と高く評価する一方で、2失点した守備に関してはチーム全体がふわっとした時間帯を作ってしまったことを前置きしつつ、サイドバックとして何とかできなかったかをよく考える機会になった様だ。
「(1失点目は吉田)麻也君がヘディングをミスした時に(酒井)宏樹が「やばい」と思って全速力でさっと、とりあえずコースに入るという走り方をすれば。結局ボールは来ないかもしれないけど、もし来たらやばいってところを最初に入れていたら。これはタラレバの話なので難しいですけど、それを見て修正できる部分もある」
局面の厳しさや集中力、そして危機察知力といったところを90分で発揮しながら、対面する相手との駆け引きや対人戦を制していく。そうした部分はあらゆるポジションの選手に求められるが、相手のキーマンであるコラシナツと酒井高徳の“デュエル”の勝負には大いに注目したい。
(取材・文:河治良幸【大阪】)
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