ブルガリア戦はキャリアを左右する一戦に
「これまで僕が一番衝撃を受けたGKは(ペトロ・)チェフ(アーセナル)。5年前のキリンカップでチェコと対戦した時、FKの場面でヤットさん(遠藤保仁=G大阪)と圭佑が立っていて、彼は圭佑のシュートに対応するポジションを取っていた。
それなのにヤットさんが蹴ったいいコースのシュートを難なく止めた。その1シーンだけでも異次元を感じました。2013年のコンフェデレーションズカップ(ブラジル)で対峙したイタリア代表の(ジャンルイジ・)ブッフォン(ユベントス)もとにかくブレないし、『止められるところは全部止める』というGKだった。世界には本当にレベルの高いGKが数多くいるんです」
こんな話をする川島は、過去の日本代表戦で世界トップGKと同じピッチで実際に向き合い、凄みを肌で感じてきた。リールセ、スタンダール・リエージュ、ダンディー・ユナイテッドを渡り歩いた欧州6年間でも衝撃を受けることは少なくなかった。
これだけ高度な国際経験を持つ日本人GKは他にはいない。自分が主戦場としている欧州勢との対戦では、数々の修羅場をくぐってきたキャリアの蓄積がより活きるはずだ。むしろ、その経験値を今ここで出さなければもはや後がない。彼にとってブルガリア戦は単なる親善試合ではなく、キャリアを左右する運命の分かれ道と言っていい。
川島は、2010年南アフリカW杯直前のイングランド戦(グラーツ)でスーパーセーブを連発し、大先輩・楢崎正剛(名古屋)から定位置を奪った。今はその頃と逆の立場に近い。一度失った定位置を奪還できるか。ポジションを奪う大変さは、本人が一番分かっている。
(取材・文:元川悦子【豊田】)
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