バルサとバイエルンを打ち破った緻密な戦略
まず、決勝トーナメントの1回戦でPSVを相手に2戦合計0-0ながらPK戦で制すると、準々決勝では昨季王者のバルセロナと激突。アウェイでの1stレグではフェルナンド・トーレスが先制ゴールを決めながら退場し、試合も1-2で逆転負け。それでもホームでの2ndレグではグリーズマンが2得点を決めて勝利。
この試合で見せたアトレティコのプレッシングを主としたある意味では“攻撃的”な戦略は、ポゼッションサッカーを打ち砕く新たな理想形ともいえるものを世界に示した。
続いて激突したのはドイツ王者のバイエルン・ミュンヘン。バルサをポゼッションサッカーの盟主に引き上げたペップ・グアルディオラ監督が率いる、現在の“ポゼッション王者”だった。
そして、このバイエルンとの対戦でも“チョリスモ”が炸裂。ホームでの1stレグでは磨き上げたプレッシングによる“攻撃的守備”が機能し、今季ブレークしたサウールの得点によって1-0で勝利。アウェイでの2ndレグでは押し込まれる展開が続く中で、1発のチャンスをグリーズマンが決める。試合自体は1-2で敗れ、2戦合計2-2となるもアウェイゴールによって決勝進出を決めた。
誰もが口を揃えて欧州制覇の筆頭に挙げていたバルサとバイエルン。この2チームを決して偶然ではなく、緻密な戦略と長期的なチーム作りによって狙い通りのサッカーを展開してアトレティコは打ち破った。
「私にとって、ポゼッションはライバルを快適にするもの」と語るシメオネ監督のサッカーは、この時点で完璧に成熟した姿を見せていた。これまでにジエゴ・コスタやアルダ・トゥランなど主力としてチームを支えた選手を引き抜かれていたが、それすらもチームを磨き上げるための過程の1つだったと思えるほどに。