欧州の舞台で見せ続けた“チョリスモ”の完成形
たった1つ、防ぎきることのできなかった失点が今シーズンを辛く重い記憶に変えた。
現地時間5月28日、イタリア・ミラノのサン・シーロ。前半15分に与えたFK、トニ・クロースが蹴ったボールをガレス・ベイルが頭で流す。ゴール前の混戦に流れ込んできたそのボールに触れたのはセルヒオ・ラモスだった。
今季、リーガエスパニョーラ、コパ・デル・レイ、チャンピオンズリーグの3つのコンペティションで計57試合を戦ったアトレティコだが、喫した失点は27。1試合平均にすると、わずか0.47点。
2011/12シーズン途中から就任したディエゴ・シメオネ監督は、2試合を戦っても1点を奪われない強固な守備組織を築き上げ、スペイン内でバルセロナ、レアル・マドリーの“2強”から遠く離れた3番手という位置付けだったクラブを“3強”と称されるまでに押し上げた。
就任初年度の11/12シーズンにはヨーロッパリーグを制覇。翌12/13シーズンには17年ぶりにコパ・デル・レイ優勝に導くと、翌13/14シーズンには18年ぶりにリーガエスパニョーラの頂点に立った。
残るは欧州王者の称号のみ。リーグ王者に輝いた13/14シーズンにもファイナルへと進出したが、この時はカルロ・アンチェロッティ監督率いるレアル・マドリーに延長戦の末に敗れた。しかし、当時は“チョリスモ(シメオネ主義)”の浸透度も100%ではなく、リーグ優勝に加えてCL決勝進出という結果は期待以上のものだったといえた。
そして迎えた今季、アトレティコ・マドリーは“チョリスモ”の完成形ともいえる戦いを欧州の舞台で見せ続けた。