名波とトルシエの問題は、いまだったらアプローチを変える
―――ブラジル戦からはずっと代表の通訳を務められたんですか?
ブラジル戦からやりましたけど、たくさん合宿があるわけじゃないんですよ。最後の2年間は結構合宿があったんですけど、最初の2年間はあまりなくて。
―――本業のほうはやりつつ、ピンポイントで日本代表の仕事をやっていたと。
そうですね。
―――以前、岡野俊一郎JFA最高顧問(トルシエ監督当時はJFA会長)から伺ったんですが、ダバディさんに「あまりトルシエさんの言っていることを直訳しないで欲しい。日本の選手は傷ついてしまうから」と言われたと。
そうですね、でも難しいんですよね、それは。確かに、そういうのは岡野さん以外にも、当時の広報部の人とか、コーチだったり、山本(昌邦)さん、大仁さんとかも、もうちょっと工夫してくれっていうのはあったと思うんです。でも監督が怒鳴ってたら……(笑)。
岡野さんがおっしゃることはわかったんです。要するに、多分日本人の選手は、みんながいる前で個人攻撃を受けることには慣れていないから、そこにちょっと気を遣うこと。とはいえ、監督がその真実を言うことで、その選手は絶対変わるとか、言った方が良いと思ったときには、ギャンブルで言ったこともあります。
ただ、コパ・アメリカのときの名波(浩)さんとの問題とかは、今だったらもうちょっと優しく言うと思う。結果論でいうと、名波さんがタフな人だから、大丈夫だったけど。あそこまで「キャプテンの資格がない」とか言われて、当時はすごく嫌だったと思うんです。
でもトルシエさんはフォローがうまいから、絶対セカンドチャンスを与えるんですよ。だからその後アジアカップに呼んでリーダーの役割を与えた。選手が嫌いだから言い続けるというようなヒステリックな個人攻撃はなかったですね。
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